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空間情報デザイン研究室 小林一郎
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2008.09.01   一局


「一局」または「誠実」について
囲碁や将棋の世界では、局後の検討をする。勝者には楽しい一時であるが、負けた者には気の重い作業だろう。しかし、その時間を超えることが次に繋がるのだ(息子達にその意味が判っただろうか)。さて、検討中に「一局ですね」といえば、「その手は面白いが、現時点でこれ以上考える必要はない」ということらしい。つまりプロは、軽い表現で、枝葉を切り捨て、本筋に迫っていく。1978年の旅は「一局」であり、それを未練たらしく振り返ってみるのは、素人ゆえのことだ。がしかし、それでも語らねばならぬ一局もある。

懐かしくて30年ぶりにチェスの本を眺めたりもした。局面を詳細には覚えていないが、明らかな勝勢を逆転されたことは確かだ。あの時、変な受けをせず、攻めていれば勝ったはずだ。と思うのは詮無きことなのだが、この歳になると過去が楽しいこともある。当事者意識が後退するからかもしれない。枝葉ばかりの話を書いたのもそのように理解して貰えばいい。

私は恩師と呼べる人を持っていない。常にこちらから落ちこぼれて行くので、先生方にしても可愛い学生ではないだろう(そんな人をどこかで見かけませんか)。I先生には英語以外に何も習っていない。しかもその英語さえ、未だに上手にならないのだから恩師などと、こちらから申し上げようがない。が、旅行に関しは丁寧にいろんなアドバイスを頂いた。あの旅で常に「前向き」でいられたのは、先生のお陰だ。経験者の意見は貴重。「あとで出くわす困難に対処する術(すべ)の予習となる」。今改めて、心から感謝したい。

フシェールには、帰国後直ぐに絵ハガキを出し、先方からも返事が来た。10月までは、お互い極めて近くにその存在を感じていたはずだ。その直後、私が出した手紙で音信が途絶えた。人間が誠実で有り続けるということは、難しいことだ。非はこちらにある。それを認めた上で、彼女にも心から感謝したい。結果として、「一局」となった出来事に対しても人は深く考察し、何かを得ることができる。私の人生の入り口で、私が彼女から学んだことは少なくはない。フランスと彼女は私の中では不可分に存在し続けている。そして私は、今でもフランスが嫌いではない。


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