空間情報デザイン研究室
空間情報デザイン研究室 小林一郎
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2008.09.13   一人旅


「一人旅」または「矜持」について
いよいよ、「あとがき」を書くときが来た。が、すでに十分書いた。これは完成原稿というより、本来、世に出ることのない「下書き」である。blogとはそもそも、どうでも良い身辺雑記(いわば一局)を語る場なのだ。書くことにこそ意義がある。そのようなものに「あとがき」はふさわしくない。判ってはいるが、最後に「旅」について書きたい。

この人はどうしてこんなに融通が利かないのかと思う時がある。きっと一人旅が嫌いなのだろうと思う。団体旅行もだめだし、出張で行く国内旅行もだめだ。自分を無名に戻す(相手から偏見なく見られる立場に身を置く)ことがないからだ。見知らぬ世界では、国家公務員だとか、研究者だとかいっても、どれほどの威力も持たない。貧乏旅行なので、問題を金で解決できない。途方に暮れつつ、少しづつ自分が強くなっていくしかない。一番弱い人間が、一番広く世界を見ておく必要がある。柔軟に、かつ、断固とした行動が必要だ。葉書を出すのも、コーヒーを注文するのも同じだ。日本にいてはそのような感覚が身に付かない。

周囲を常に気にするというのも同じことだろう。歩きながらヘッドフォーンをしている人は可哀想だと思う。人間に取って最も大切な感覚が鍛えられないからだ。つまり、五感を総動員したときに、はじめてやってくる第六感。50日弱の旅であったが、良い勉強になったと思う。慣れてくると、きっとこうなると先を読む。読めば、あらかじめ、確認をしておくべきだ。「汽車は、6時に出ますよね」。その会話から、不幸な事件に発展することもあるかもしれないが、幸せが訪れることもある。自分の気づかなかったことが色々と判ってくる。それすらも、自分の感覚で上手く処理することが重要なのだ。

「一人旅」に最も近いのは読書だ。結局、本を読んでいない人は、「一人旅」をしていない人だと思うようになった。回数が問題ではない。その後何度も旅をしたが、最初の「あの旅」以上に学ぶことはなかった。同じように、若き日の数冊の本や幾つかの映画が、実は自分の一部となっていることに気づく。

くどいけれど、軽い不幸は、人間にとって必要なことなのだ。トラブルを避けたいのなら、、じっと部屋に籠もっていればいい。しかし、それでは何も学べない。「教えてください。頑張ります。何でもします。」で何かが得られると思ってはいけない。それでは自立的に行動できる人間にはなれない。大事なのは、次々とやってくる小事件をいかにストレス少なく越えていけるかだ。自分自身で、まずは「答え」を用意することだ。それが正しいかどうかはそれほど重要ではない。小さな事ではあっても、答えを自分の脳みそで「捻り出す」ことが大事なのだ。「やり方は誰も教えてはくれない。頑張るだけではだめだ。必要最小限のことだけすればいい」。人生は短く、やるべき事は山のようにある。

「若者は孤独で良い。一人旅の途中なのだ。卑屈になる必要はない。ただ、人間としての(あるいは学生としての)矜持は忘れてはならないだろう」。

この言葉を、57才の私から、27才の僕への無事帰国に対するお祝いの言葉としたい。

from ponts 

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